うっちーわーるど

趣味のエッセイ「Uty Days」 その2

のび太君のゆううつ

前回に続いて、藤子・F・不二雄の話題です。今回は、同先生の代表作、「ドラえもん」から、「のび太君」を引き合いに出したいと思います。
「のび太君」といえば、ダメ男の代名詞として有名です。勉強ダメ、運動ダメ、根性も無く、特技は射撃とあや取りだけ。まるでいいところの無い男、というのが、一般的なのび太君の見方でしょうか。
しかし、忘れてはならないのは、のび太君は何と、あのしずかちゃんと結婚するということです。あののび太君にどうしてそんなことが出来たのか、その辺をちょっと掘り下げてみたいと思います。

〜馬鹿らしくもいじらしき男の心意気〜

しずかちゃんがなぜ、のび太君と結婚することにしたのか、誰でも一度は抱く疑問でしょう。これに対して、本人の言によりますと、「そばについててあげないとあぶなくて見てられないから」(単行本20巻「雪山のロマンス」)だということです。
現在(小学生)の、のび太君はこれを聞いて、「こんなのまっぴらだ」といいます(そりゃそうだ)が、まぁ、これは言ってみればしずかちゃんの言い訳のようなものでしょう。
しずかちゃんほどの女性が、いくら心配だからって好きでもない人と結婚するわけはありません。と、いうか、「心配だ」=「好きだ」ということと考えるのが自然で、要するに好きだから結婚する、それを遠まわしに言ったことと自分は解釈しております。(ま、早く結婚してあげないとあぶない、と、思ったというのはあるでしょうけど...)
それで、最初の疑問に戻るわけです。どうして、しずかちゃんがのび太君を好きになったのか。

この理由は、しずかちゃんのお父さんの言葉に求めます。「あの青年は、人の幸せを願い、人の不幸を悲しむ事のできる人だ。それが一番人間にとって大事なことなんだからね。」(単行本25巻「のび太の結婚前夜」)
のび太君は、決してまじめな少年ではなく、何かとズルをしようとするし、秘密道具の悪用もかなりの前科があります。とはいえ、何でも許される「悪魔のパスポート」を使い切れなかったり、「コンピュータペンシル」のカンニングも出来ず、絵本の浦島太郎に同情したり、拾った捨て猫、捨て犬は数知れず、ちょっとそこらの男には真似の出来ないところがあります。

極めつけは、自分と結婚したらしずかちゃんが不幸になるから、といって、しずかちゃんに嫌われようと奮闘するくだりでしょう。(単行本32巻「しずちゃんさようなら」)のび太君は先生に「ろくな大人になれないぞ」と叱咤され、このまましずかちゃんと結婚すれば、しずかちゃんが不幸になると考えて、結婚もしていないのにあの手この手で別れようとします。傍から見れば、バカそのものでしょう。ですが、この回、のび太君ははじめから最後まで泣きっぱなしで、真剣にしずかちゃんに嫌われようとします。つかれて、遠くを見つめるのび太君を見て、「ばかばかしいとは思うけど、いじらしくもあるなぁ」という、ドラえもんのせりふが、すべてを表しておりましょう。

結婚前夜を見てきたのび太君は、戻ってきてからしずかちゃんに「しあわせにする」と誓います。しずかちゃんがわけがわからずきょとんとしているこのシーンは、間違いなく笑うところなんでしょう。でも、そんなのび太君の純情に、どこか、じーんとするのは、私だけでしょうか。

御意見有ったらぜひ聞かせてください。(master@unitmarket.jp)

参考・引用文献
小学館 てんとう虫コミックス「ドラえもん」

2001.10.25 うっちー(master@unitmarket.jp)

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