この理由は、しずかちゃんのお父さんの言葉に求めます。「あの青年は、人の幸せを願い、人の不幸を悲しむ事のできる人だ。それが一番人間にとって大事なことなんだからね。」(単行本25巻「のび太の結婚前夜」)
のび太君は、決してまじめな少年ではなく、何かとズルをしようとするし、秘密道具の悪用もかなりの前科があります。とはいえ、何でも許される「悪魔のパスポート」を使い切れなかったり、「コンピュータペンシル」のカンニングも出来ず、絵本の浦島太郎に同情したり、拾った捨て猫、捨て犬は数知れず、ちょっとそこらの男には真似の出来ないところがあります。
極めつけは、自分と結婚したらしずかちゃんが不幸になるから、といって、しずかちゃんに嫌われようと奮闘するくだりでしょう。(単行本32巻「しずちゃんさようなら」)のび太君は先生に「ろくな大人になれないぞ」と叱咤され、このまましずかちゃんと結婚すれば、しずかちゃんが不幸になると考えて、結婚もしていないのにあの手この手で別れようとします。傍から見れば、バカそのものでしょう。ですが、この回、のび太君ははじめから最後まで泣きっぱなしで、真剣にしずかちゃんに嫌われようとします。つかれて、遠くを見つめるのび太君を見て、「ばかばかしいとは思うけど、いじらしくもあるなぁ」という、ドラえもんのせりふが、すべてを表しておりましょう。
結婚前夜を見てきたのび太君は、戻ってきてからしずかちゃんに「しあわせにする」と誓います。しずかちゃんがわけがわからずきょとんとしているこのシーンは、間違いなく笑うところなんでしょう。でも、そんなのび太君の純情に、どこか、じーんとするのは、私だけでしょうか。
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参考・引用文献
小学館 てんとう虫コミックス「ドラえもん」
2001.10.25 うっちー(master@unitmarket.jp)